廻音
「輪廻さんと接点が持てるかなぁって思ったからお前の事切れなかったけど、輪廻さん今彼氏とラブラブじゃん?
だったらもう意味ねぇし…。
あぁ、勘違いしないでね?廻音の事、好きだったよ?「最初は」、ね。」

この場所から這ってでも逃げ出したかった。
己の存在が恥ずかしくて情けなくて。

姉のせいではない。
けれどこの瞬間ほど、姉が憎いと感じた事はなかった。
お門違いな事は解っていたけれど、八つ当たりでもしていないと自身を保てそうになかった。

「ここは俺が支払うよ。手切れ金と、慰謝料ってやつ。」と言って立ち上がったのと、「彼」が目の前に現れたのは、ほとんど同時だった。

いつの間に現れたのか、とても醒めた瞳で、けれど全身からは嫌でも分かる程の殺気が満ちていた。
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