蜜色トライアングル ~Edges of precise jade


圭斗はふいに身を離し、上着のポケットから何かを探った。

ポケットから何かを取り出し、木葉に見せる。

そこにあったのは……。


「……指輪?」

「そう、ペアリング。おれたちが恋人同士だっていう証」


圭斗は素早く木葉の右手を取り、薬指に嵌めた。

指輪は月の光を受けてきらきらと銀色に輝く。

驚く木葉に、圭斗は強い声で告げる。


「どんなときも、これを絶対にはずさないで。家事の時も、お風呂に入るときも、仕事の時も」

「……圭ちゃん……」

「特にあいつらの前では絶対に外さないこと。……これを見たら、おれを思い出して?」


圭斗はにこりと笑って言う。

木葉は右手を上げ、薬指に光る指輪を眺めた。

……なんだか、夢みたいだ。

自分が物語のお姫様にでもなったような気がする。

お姫様がワンナイトラブをするかどうかはさておいて。


「さあ、帰ろう。家まで送るよ」


圭斗は木葉の手を引き、ゆっくりと歩き出す。

木葉は引かれるまま、圭斗に続いて歩き出した。


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