蜜色トライアングル ~String of origin

4.海の向こう




海沿いのホテルの一室。

夜の海に船の灯りがポツポツと浮かんでいる。

波間にゆらゆらと揺れる灯りを眺めていると、異国に来たんだなという実感がわいてくる。


「海、か……」


この海の遥か向こうに、二人が育った日本がある。

二人が姉弟として育った懐かしい場所。

温かい思い出に溢れた場所。


昔のことを思い出すと、胸がいっぱいになる。


「……」


2年前のあの日までは、まさかこんな未来が訪れるとは夢にも思っていなかった。

二人共に傷つき、そして二人で選んだ未来。


「何見てるの?」


シャワー上がりの由弦が、窓際にいた木葉を後ろから抱きしめる。

懐かしいグリーンノートの香りが木葉を包む。

肌触りの良いバスローブの裾を寄せ、木葉は由弦の腕にそっと触れた。


「ううん。……ちょっと、風に当たりたかっただけ」

「風邪ひくよ?」


< 107 / 122 >

この作品をシェア

pagetop