蜜色トライアングル ~String of origin

2.後悔と切望




<side.由弦>



22時。

花壱のカウンターの中で、由弦はひとりで黙々と豆腐のサラダを作っていた。

慣れた手つきでキャベツとレタスを切り、軽く合える。

その上に乗せる豆腐を包丁で切ろうとし――――その瞬間、指先に痛みが走った。


「……つっ……」


人差し指の先から赤い血がじわりと滲む。

……赤い、血……。


由弦はぐっと目を瞑り、包丁を置いて蛇口をひねった。

冷たい水が指先の血を流していく。


「……」


――――忘れられない。


一度知ってしまった木葉の体の感触を、忘れられるはずがなかった。

思い出すだけで体が高ぶり、心が軋むように痛む。


「……っ、木葉っ……」


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