蜜色トライアングル ~String of origin



「あいつ……!?」


由弦の頭にカッと頭に血が上る。

きっと圭斗は気付いているはずだ。

……自分の気持ちに。


その上で、こんな……。


「……ははっ……」


由弦は乾いた声で嗤った。

――――まさか、見せつけるつもりなのだろうか?

もしくは挑発か。


木葉は圭斗の性格を知らない。

あの優しげな瞳の下に隠された、冷徹なまでの冷静さ。

もし知っていたら、あの男を好きになどならないはずだ。


「……っ」


由弦はとっさに荷物を取り、裏口から店を出た。

タクシーを拾い、都心へと向かう。


怒りのあまり、正常な判断ができない。

由弦は唇を歪め、笑った。


「いいぜ……乗ってやるよ……」


自分でもどうにもできない激情が、胸を焼く。

由弦は窓の外を見ながら、ぎりっと唇を噛みしめた。


<***>

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