撮影日和

金曜日の放課後、僕は珍しく学校に残っていた。

部活をやってるとこが少ないから、体育館も静かだね。

「あれ?珍しいな、お前がこんな時間にいるなんて。」

額の汗を左手で拭いながら、雄介が言った。

「うん・・なんとなくね。雄介のアホ面でも見ようかと思って。」

「じゃもう見たろ、帰れば。」雄介がむっとして言った。若いねー、雄介。

「ボール、貸してよ。」

雄介が思いっきり僕に投げた。

バシッてすごい音するんだけど・・。

「いたいよ、冗談だろ。怒るなよ。」

「明日、忘れんなよ。忘れたら、かおりがすげー怒るぜ。」

「雄介ってさ、かおりちゃんと付き合ってるの?」

「冗談辞めてくれよ。あいつとなんか付き合えないって。あ、もしかして、かおりのこと好きなの?」

「え?まさか・・。よく知らないし。かわいいのはかわいいよね。」

そうそう。かわいいとは思うけど、好きとは違う・・はず。

「ま、いいや。俺、もう帰るけど、どうする?」

「僕も帰るよ。ボール。」雄介に思いっきりボールを返した。

バシッていったね。

「いてっ。意外と根に持つタイプな、お前。」雄介が苦笑いする。

「まーね。」
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