蜜色トライアングル ~Winter Blue

2.恋の苦しみ




23時。


木葉はパイプベッドに身を横たえ、冬青を待っていた。

冬青はまだ帰ってこない。

仕事だとわかってはいるが……。


「……っ、お兄ちゃん……」


兄は夕刻の、木葉の分の剣術指導も行っている。

自分が担当する夜の指導まで終えてから、事務所に戻っているらしい。

昼間にできなかった分を夜にこなしているようだ。


遅くなるのは仕方がない、けれど……。

こんな時間まであの女の人と一緒なのだろうか?


ひょっとしたら、仕事ではないのかもしれない。

二人で、どこかに……?


「……イヤ……」


兄の青みがかった美しい瞳が他の女性を見、あの柔らかい唇が他の女性に口づけると思うと、胸が掻き毟られるような思いがする。

木葉は滲んだ涙をぬぐい、目を閉じた。

……もう、何も考えたくなかった。


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