エゴイストよ、赦せ
そんなやりとりをしている内に、どうやら彼女の降りる駅になったみたいで、彼女は立ち上がった。

何でもないです、と言って僕に背を向ける。

だのに彼女は、そのまま動こうとしない。


僕はもう一段、ギアを下げる。

溜息は飲み込んだ。

表情と、それから声も、やわらかく。


「いいよ? 何?」


「えっと、あの……、マフラー」


「マフラー?」


意図を掴めきれない僕に、振り向いた彼女は遠慮がちに、しかしながら、はっきりとした口調で言い放った。


「そのマフラー……、貸して!」




煙草が吸いたい、と強く思った。


ホント、どうかしてたんだ。


きっと。


僕は。


彼女も。







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