エゴイストよ、赦せ
ふと思いついて、テーブルの上に、雑誌やら小説やら、いくつかの本を積み上げた。

それから、本の一番上に、林檎をそっと乗せてみた。


「なに、なに?」


「本当はさ、檸檬なんだ」


「レモン?」


「そう。教科書に載ってなかった?」


「え!? 教科書? 美術の絵……とか?」ローサが小首を傾げて言う。


知らないみたいだ。


どうして、こんなことをしたのかって?

見える風景をさ、変えてみたいと思ったんだ。

そう、ほんの少しだけ、僕はそう思ったんだ。


林檎一個分だけ、ローサを想ってみた。

林檎一個分だけ、心が温かくなった。


僕の吐き出す煙に、ローサの吐き出す煙が絡んで交わる。

手を取り合って、ふたりの代わりにワルツを踊りながら、上へ上へと昇っていく。

空に届くかと思って見てたけど、届いたのは天井までだった。


林檎一個分の想いも消えてしまった。







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