エゴイストよ、赦せ
温もりを知らなければ、寒さに凍えることもなかった。

誰かを求めなければ、誰も去っていくこともなかった。

そう、ずっとひとりなら、寂しいなんて感じない。

ひとりなら、悲しいことは何もない。

悲しむことなんてないんだよ……、ローサ。


携帯が、またローサからのメールを受信する。




 『あと三日は長いよ』




題名のないメールには、それだけが書かれていた。


彼女は、僕に何を求めているのだろう?

もしかしたら、僕の中に、違う誰かを見ているのだろうか? 

僕が、その誰かに似ているとか……。

たとえ誰かの代わりだったとしても、僕を必要としているのならば、もう少しだけ。

あと、少しだけ。

ひとりでも大丈夫だと彼女が気づくまで――。


 

ベランダの手すりで、滴る雫がステップを踏む。


雨の調べは、メロウなロック。


流れる冷気がスロウ。


その三度下を、溜息のハーモニー。


吐き出す煙が絡んで溶ける。


明日はローサの部屋に行こう。


それで彼女が、寂しさを忘れてくれるなら。







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