『新撰組のヒミツ』短編集
「……別に構いません」

「そうか。まあ、今後が楽しみだ」


お前も男だからな、と。


意地の悪さを含んでいるように聞こえるのは気のせいだろうか。斎藤は無口で近寄りがたかったというのに、意外と笑うし、多く話すことが分かった。


それもこれも、光を女装させようとしなければ、分からなかったことである。


最初は襖を蹴り倒した仕返しのつもりだったが、斎藤の思わぬ一面を知ることが出来た。


(それに、可愛ええモン見られたし)


口には死んでも出せない言葉を内心呟くと、また知らない内に彼女に見とれている自分がいることに気付いた。


――何やねん、アホンダラ。自分だけ照れまくってどこぞの町娘や、ほんま。


それからは、この時代ならではの女の話し方や仕草、あまり知られていない商家や町人での知識などを彼女に伝えていく。


それらを彼女が実践する度に、頬だけではなく全身に感じる熱を必死に誤魔化した。


顔を横に背け、顔の熱さを振り払おうとする様子に、光は不思議そうに首を傾げ、壁に寄りかかって見つめている斎藤は、何とも愉快そうな笑い声を発する。


そのため、光が少しだけ顔を赤らめていたことには誰も気付かないのだった――……。






【お わ り】


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