素直じゃないあたしを温めて

「ん……?」



あたしの顔を見て優しく微笑んでいた柳瀬が突然後ろを振り返って、首をかしげていた。



「何か音しなかった?」


「へ?そう?何にも聞こえなかったけど……」


「そっか、気のせいか」


「柳瀬、疲れてるんだよきっと……早く休んで?明日休みだし。そろそろ帰ろう」



あたしがベンチから立ち上がると、


「送るよ」


「良いよ、そんな」


「もう遅いから暗いし、心配だから」


「じゃあこんな時間にこんな所呼び出さないでよバーカ」



あたしが冗談っぽくそう言って舌を出すと、

「わりぃわりぃ」

とまたあたしの頭を撫でた。


柳瀬に触れられた部分が熱くて冷めない。
いつからあたしはこの人の事をこんなに好きになったんだろう。


もう、離れたく無い。ずっと一緒に居たい。



「じゃあ、帰ろっか」


「うん」



でも一つ、苦しい事がある。


どうしてあたし達は“教師と生徒”という関係なんだろう。



それは、絶対に壊せないカベだった。

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