クラスメイト
一章 高城明日香

揺れる髪

どこかで感じた事のある感覚。

そう思った矢先に夏休み明けの事を思いだした。



言葉を聞く事は年に数回あったが、インフルエンザというものに感染したのは今回が初めての経験だった。39度という高熱に苦しんだが数日で熱は下がり、学校へ通わなくいてもいい大義名分を得れた事には感謝を感んじながら残りの数日を過ごすことになった。





五月十九日、時刻は八時半少し前。坂田修は一週間以上ぶりに在学している伊奈沢高等学校へと向かっている。




両親と姉と暮らすアパートを出てから数分の所にある駅から電車に乗り、今しがた高校の最寄り駅である伊奈沢駅へと到着したところだ。駅の東口から出て少し進んだ所に目的地はある。


最短で行くには直進して正面にある商店街を抜けて行くのだが、この大福アーケードと呼ばれる通りは、この時間は歩くのが困難なほどの賑わいをみせる。主に主婦層だ。


やはり今日も賑わっているようで、その証拠に修の耳には、アーケードからの雑音や雑踏が微かだが届く。駅前も駅前で学生や出勤前であろうスーツ姿の男達で賑わっているのだが、それとは違う質の音が、確かに聞こえてくる。



アーケードは毎日この有り様なので大多数の生徒達は、この道を避けて隣りの小道を抜けて行く。修も勿論それに該当する。


駅前から小道へ入ると幾分か静かになった。

道の幅は軽自動車がギリギリ通れるほどのもので、車が通る事は少ない。ウンザリするほどの回数通ってきた道だが、一週間利用しなかっただけだというのに、妙な違和感を感じた。

 
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