泡沫眼角-ウタカタメカド-

その場にいたほとんどの人間から色が失せた。
そして次の瞬間には蜂の巣をつついたような大騒ぎ。


「まさか香田が!?」
「炯斗と組んで、吉野を殺ったのか?」
「裏切りだ!!」
「そんな!」



断片的に聞こえてくる言葉。

「そんなっ、炯斗はそんな人じゃっ――」


恵の必死の叫びは騒ぎに押し潰されてしまう。
すぐに飛び交うのは言葉だけでなく拳に。

争う者と止める者。
大乱闘が始まらんとしたその時――

一際響いた太めな声。


「ことのん! ちょっと、まだ――」


『皆さ…やめて……い!!』

響く妙な機械音声もかき消された。


が――





『……っ、言うコト聞いテくれないと、皆のコトキライになっちゃうんだからネッ☆!』





「「………え?」」




目標(部屋の全員)、完全に沈黙。
パターン白。
全員が白く呆けています!


それは一時停止どころの話ではなく。

ゴーン…という4時の鐘の音だけが、流れる時を証明している。


ガタッとした落下音で一気に視線が集まって、目一杯涙を溜めた言乃は落ちたタブレットを慌ててタップ。


『いいいや、私はそんなことを言いたい訳ではなくてで『話をキイテ欲しいだけナノッ♪』

「――!」


ロリータ機械音に割り込まれたらしかった。


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