泡沫眼角-ウタカタメカド-
タクシーを飛ばして選挙事務所へ着いてみると、救急車が現場を走り去る所だった。

「怪我人がいるのか…」

「それより、聞き込み始めるわよ。後続に情報持っていかれたらたまったもんじゃないわ」


朋恵の言う通り、緊急を知らせるサイレンが消えていく側で、続々と覆面パトカーが到着する。


二人は素早くメモを用意し、制服警官が必死に抑えている野次馬の最前列に近づいた。


「失礼、先ほどここで起こったことを目撃しましたか?」

「は、はい…」


一番近い、気弱そうな男性に朋恵は尋ねる。


「そのことについて、聞かせて頂けません?」

「あ、はい。いきなりのことだったんです。

いきなり……このビルのガラスが割れて、様子を見に出てきた人の腕から血が…」

「なるほど、出てきた人は、何で怪我をしたか見えましたか?」


男性は首を振った。


「近くに人は?」

「いませんでした。でも、上を見上げて何かを見たとたんに……」


となると凶器は銃、か。
音に気付いてないところを見ると、ご丁寧にサイレンサー付きか。



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