泡沫眼角-ウタカタメカド-

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日奈山については、古株の奴ほどよく知っている。付き合いは長いようだ。
組での位置はあくまでも“若の友人”。組の内情に関わるようなことには参加していないらしい。

みな一様に語るのは若の支えになってほしいとのことだ。

若とはハザマカナデのことで間違いないだろう。ハザマは最近、今までと大きく違う方針を取ろうとしていたりと、周りからの反感も強かったらしい。
味方となる人物が少なかったのかもしれん。
組の連中が戸惑うことも多かったようだ。

変革を唱えだしたのはおよそ五年前から。
古株の連中からは危うい存在として見られていたことが口ぶりから窺える。
(だからこそ、日奈山についてほしいと思われたのかもしれない)

俺の仕事は以上だ。
オヤジによろしくな。

道下
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グシャリ、
朋恵が書類を握りつぶした。

──ちょうど読み終わったところで、よかった…!

しかしこの道下という刑事も少し不親切だ。
なによりこの朋恵の前に狸翠の存在を窺わせる文言を最後に置くなんて…。

何で私が狸によろしくなんていわなくちゃいけないんだ、と冷たい闘志が燃えているのがあり
ありと見て取れる。

触らぬ神に祟りなし。暴力もない。


「とにかく、組員でもない、狭間奏にとって支えとなる人物であるなら、」


わなわなとした震えがまだ収まっていないものの朋恵の後を、高橋が引き取る。

「彼には、人質としても、利用価値があるはずです」

「そうなれば、やっぱり犯人は香田…?」

「しかし…」


高橋は先ほどの束をまためくる。


「これによれば、香田は人望も厚く評判はいいみたいですよ」

「げ、そんなもんもあるの?」

高橋の手元をのぞき込むと、プリントアウトした資料が考察の前に挟まっていた。


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