泡沫眼角-ウタカタメカド-

「……哀れだ、と言った」

「あんだと?」

今度は確かに聞こえた。
が、聞き逃していい内容ではない。

誰が哀れだと?
そんなに“哀れ”の意味もわかっているわけではないが、侮辱されたことは確実だ。


侮辱されたらやり返す。
落とし前はきっちりつける。

それが裏の人間――いわゆる、ヤクザの掟だ。


手を抜く必要もねぇ、さっさと終わらす!!

ぼんやりと立つフードの男に気付かれないように拳を握る。
軽いフットワークで間合いに踏み込むと、低い姿勢から攻撃を繰り出した。

パシッ……と、呆気なく右手はフードの左手に捕まった。


――こいつ…!!

右手を引こうと力を籠めるが、男の左手はびくともしない。
それどころか、佇まいは話し掛けた先ほどより、少しも変わっていない。

――ヤバイ、

力の差を悟った時には遅かった。

!!

軽い、あまりにも軽い、刺さる音。
一撃。たったそれだけで、ヤクザの男の世界は一変した。


< 3 / 267 >

この作品をシェア

pagetop