悪魔のようなアナタ【完】



息を潜めてその光景を見つめていた玲士だったが、晃人の横顔に眉根を寄せた。

晃人の瞳に漂う、切なげな光。

その眼差しに玲士はあることを直感した。


――――同じだ。


晃人は自分と同じ気持ちを灯里に抱いている。

そう悟った瞬間、玲士の胸に黒いものが一気に押し寄せた。


晃人は灯里の幼馴染でもあり、取締役でもある。

そして何より、彼は灯里の心に最も近い男だ。

灯里が昔から全幅の信頼を寄せている、ただ一人の男……。


得体のしれない不安が胸に込み上げる。

玲士は無意識のうちにぐっと両手を拳に握りしめた……。



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