悪魔のようなアナタ【完】



―――― 一時間後。


「食べ過ぎた……」


灯里は口元を押さえて宴席会場を出た。


あれから山岡課長に勧められるまま、あれもこれもと食べてしまった。

下手したら2人前ぐらい食べた気がする。


灯里はいつも飲み会ではあまり酒を飲まない。

飲み会で用意されるのは主にビールや日本酒で、そのどちらも得意ではないからだ。

かわりに料理をつい食べすぎてしまう。


「ううっ……」


少し外を散歩しようかとロビーを横切ろうとした、その時。

ロビーの奥から晃人の声がし、灯里は思わず足を止めた。

晃人はどうやら電話しているらしい。


「だから、そうではないと言っているだろう、朝子」

『…………』

「話を聞け。だから……」

『……』

「朝子がそう思っても、俺は……」


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