悪魔のようなアナタ【完】



悪魔は氷の笑みを浮かべて灯里を見下ろす。

灯里は悪魔の顔と桃をちらちらと見比べた。


――――桃は欲しい。

というか先に目を付けたのは灯里だ。

この桃に対する権利は灯里にある。


灯里はさっと手を伸ばし、桃を奪い取ろうとした。

が、玲士はすっと腕を上げてその手をかわす。


「なに? その態度。お前、自分の立場分かってる?」

「渡しなさいよっ! それはあたしの桃よっ」


言い募る灯里の前で玲士はくすりと笑い、桃に指を伸ばした。

白く細い指先で、器用に桃の皮を少しめくる。

目を見開く灯里の前で玲士は桃を少し齧った。

どこか色気の漂う横顔に、濡れた唇に思わずドキッとする。

これほど整った容貌だとどんな仕草をしても似合うらしい。


灯里はしばしボーッと玲士を見つめていたが、やがて我に返って叫んだ。


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