悪魔のようなアナタ【完】
「ほら、食べろ」
「ありがとう、晃くん」
灯里は晃人が切り分けた桃を一切れフォークで刺し、そのまま口に入れた。
……先ほどの桃より格段に甘く、瑞々しい。
美味しさに目を輝かせる灯里を晃人が優しい表情で見つめる。
「やっぱ、晃くんが選ぶのは美味しいね」
「そうか? かなり久しぶりだからな、勘が鈍ったかもしれんと思ったが……」
「そんなことないよ。晃くんが選ぶものに間違いはないよ」
灯里はフォークで次の切れ端を刺しながら晃人を見た。
昨日あれだけ食べたのに、美味しすぎて止まらない。
次々と食べる灯里を晃人は目を細めて眺めている。
その眼差しは会社で見せる鋭い視線とは違い、柔らかで優しい。
灯里は桃を頬張りながら首を傾げた。
「晃くんは食べないの?」
「……俺は見てるだけで充分だ」
「えっ……」