悪魔のようなアナタ【完】

2.自分にないもの




会議の後。

会議室の後片付けをしていた玲士に晃人が声をかけてきた。


「水澤。ちょっといいか?」


晃人は手近にあった椅子に座り、腕を組んだ。

既に他の役員や部課長は退席し、会議室には二人だけだ。

玲士は眉を顰め、向かいの椅子に座った。


「何でしょうか?」

「君に聞きたいことがある」


晃人の言葉に玲士はクッと片眉を上げた。

その目にはいつもの冷やかさが漂っている。

玲士は形の良い唇を開き淡々とした口調で言った。


「あなたにわからないことを、おれが答えられるとは思えませんが?」

「……違う。前月実績の話じゃない」


晃人は机に肘をつき、指を組んだ。

そのままじっと正面から玲士を見据える。

強い光を帯びた一重の瞳に、玲士は眉根を寄せた。


「単刀直入に聞こう。……君はなぜ、この会社にいる?」

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