悪魔のようなアナタ【完】



晃人の言葉に灯里はうっすらと頬を染めて俯いた。

この歳になって好き嫌いなど自分でも恥ずかしいと思うが、晃人は昔から灯里が嫌いと言ったものを無理に食べさせようとはしない。

甘やかしているとも言えるが……。

さすがに白米がダメとか言ったら晃人も甘やかしはしないだろうが、二つ三つの好き嫌いなら大目に見てくれる。

――――厳しい一面と、甘やかしてくれる一面。

こういうところは本当に敵わないなと灯里はしみじみ思う。


サラダをつつき始めた灯里を、晃人は正面からじっと見つめる。

その瞳に『ん?』と内心で息を飲んだ灯里に、晃人は一拍置き、口を開いた。


「そういえば、お前。――――水澤とはどうなってる?」


灯里は思わずゲホッとむせてしまった。

……なぜ晃人がよりによって悪魔のことを話題にするのか?


仕事で何かあったのだろうか?

と思って晃人を見た灯里だったが、その目に宿る真剣な光に息を飲んだ。


「ど、どうって……。別に何も……」

「…………」


晃人は何も言わず、探るようにじっと灯里を見つめる。

その視線の鋭さに灯里は内心で息を飲んだ。


――――何もなかった、とは言えない。

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