悪魔のようなアナタ【完】




灯里の脳裏にこの間の給湯室でのことがよぎる。

強引に口づけされ、そして……。


目を白黒させる灯里を玲士はじーっと凝視する。

やがて灯里の方が根負けし、キッと玲士を見上げた。


「ちょっと、何なのよ。あんまりじろじろ見ないでよっ」

「別に、お前を見てたわけじゃない。複合機を見てただけ」


玲士はすらっと言う。

やはり煮ても焼いても食えないと頬を引き攣らせた灯里に、玲士は腕を組んでうっすらと笑う。


「自意識過剰なんじゃないの、お前。いくらおれでも所構わず食ったりしないよ?」

「今更信じられるかそんなの!」


思わずざざっと後ずさった灯里に、悪魔は唇の端を歪めて笑った。

その瞳は透き通った氷のように美しいが、冷たさも相変わらずだ。

灯里ははぁと目をそらし、複合機に最後の一枚をセットした。


「何それ。パンフレット?」

「そ。三村電機のレセプションでもらってきたやつ」

「三村電機? ……確か、取締役も……」


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