悪魔のようなアナタ【完】
灯里は無意識のうちに頬に触れている晃人の手に自らの手を重ねた。
晃人は一瞬手を強張らせたが、すぐにもっと包み込むように力を込めてもう片方の手で灯里の頭をさらっと撫でた。
晃人の手の懐かしい感触が、昔から変わらぬ眼差しが灯里の心を包み込んでいく。
灯里はしばらくそうした後、晃人の手をそっと離して顔を上げて笑った。
「ありがとう、晃くん。なんだか落ち着いた」
「……灯里……」
「チャンスをくれてありがとう。あたし、もっと頑張るからね」
灯里は言い、にこりと笑った。
今回の仕事で自分にもできることが増えた。
もっとできることを増やして、皆の役に立つ人間になりたい。
晃人の期待に応えていきたい。
それがきっと、自分自身の成長にも繋がる気がする……。
灯里の中で一つの決心が生まれる。
再び目を輝かせた灯里を、晃人は目を細めて眩しそうに見つめていた――――。