嘘つきヴァンパイア様


「あ、ごめん。なんて言うか…私は長い時間慰めたのになかなか泣き止んでくれなかったんだよ。でもね、呉羽の…あの言葉ですぐに泣き止んだから少し悔しいだけだよ」


ペロッと軽く舌をだす彼女に呉羽は笑いながら手を握る。


「そんなことかよ。心配させるな。ただ、自分を知ってる涼子より、知らない俺のほうが素直になれたってだけだよ」


「そんなことないよ。でも、少し格好良かったかな」

「惚れ直した?」


「え?う〜ん…」

「そこは頷けよ。もう、いい。いくぞ」


手を引かれ、二人で歩きだす。身長の高い呉羽だが、きちんと涼子に合わせて歩いてる。


そのことが少し嬉しく、握られた手を自らも握れば彼は"そうだ"と、つづける。


*
< 79 / 475 >

この作品をシェア

pagetop