政略結婚 ~全ては彼の策略~
政略結婚の始まり


もうすぐ4月。
社会人3年目に突入しようとしていた矢先、優香(ユウカ)は父親に「大事な話があるから実家に帰ってきなさい。一緒に夕食を食べよう。」と金曜日の夜に呼び出された。


優香は社会人になってから一人暮らしを始めてはいたが、父親が社長を務める会社に勤務しており、実家から程遠くない距離に住んでいた。

一応、社長令嬢という肩書きが自分についているのは分かっている。
世間一般に見ても、優香はとても満たされた生活を送ってきた事も承知していた。
それが自分の実力ではなく、両親の実力でという事も。
優香はそれが時々とても不安だった。
幼い頃は、自分の力では無いのに周りから褒めそやされる事に戸惑いすら感じていた。

自分の実力に見合うような身の丈に合った暮らしを楽しむ方が(しょう)に合っていると思っていた優香は、社会人になり、ようやく自分だけの力で生活していこうと一人暮らしを始めたのだった。

それでもやはり心配性で過保護な両親の目から遠くへ離れることは出来ず、就職は実家の会社へ、一人暮らしのマンションも父親が購入してくれたところに暮らしている。

マンションに至っては、他の住人からすれば"どうしてこんなに若い女性がこのマンションに?"と優香に疑問の視線を向けてくるが、無視するしかない。

父親曰く、「早く結婚してこのマンションに住みなさい。」とのことだ。

そんな相手は今のところ存在しないが、結婚と言われても優香は現在24歳。就職して2年しか経過していないのに、結婚という言葉を身近に感じるにはまだまだ時間がかかりそうだった。



父親からの急の呼び出しに、何かあったのかと不安に思いながらも、優香は1ヶ月ぶりに実家へと向かった。





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