政略結婚 ~全ては彼の策略~

***

手の届かない存在だと諦めようとした時もあった。


上司の娘。
それも勤める会社の社長の娘だ。

いくら自分がそこそこ有名な会社の子息だとしても、悟には2人も優秀な兄が居るため実家の会社を継ぐようなことは無いし、実家の会社からは離れてそちらに勤めることはないと伝えていた。

実家とは無関係に、実家には頼らず、自身の実力だけで社会で挑戦していきたい。
悟はその通りに仕事へ没頭し、その実力も認められ異例とも言える早さで課長になるという最初の出世を手に入れた。

そんな思いとは裏腹に"彼女の存在を知った時"、実家の権力を振りかざしてでも手に入れたいと思ってしまったのも事実だった。


——初めて彼女に出会ったのは、上司である副社長の家で毎年行なわれているというホームパーティに参加した時。

自分よりも年配者が多い空間で、明らかに若い彼女は凛とした雰囲気で楽しげに自社と親睦の深い会社社長と談笑していた。

よく知った仲なのか、「これもお好きですよね?」と彼女はその社長へ料理を取り分けてあげていたり、他の出席者にも自ら挨拶に向かい飲み物を新しい物に取り替えてあげたりと、依頼しているサービス会社の従業員かと思う程気配りをしている。

他の参加者達は当たり前に、その場にいる業者の従業員達にあれやこれやと注文していたが、彼女は違う。

従業員にさえ声をかけ気にかけているようだったり、楽しそうに談笑している。
元々知り合いなのか、そうでないのかは分からないが、パーティの参加者がこの様な振る舞いをするのを悟は見た事がなかった。

かと言って気取った様子もなく、自然体で当たり前のようにそれを行っている。


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