黒水晶

8‐2 魔法能力、完全覚醒



翌日。

マイ達は、フェルトが手配してくれた宿をチェックアウトし、次の街を目指して出発した。

突然出発することになったにも関わらず、エーテルは穏やかに賛成した。

フェルトのおかげで、彼女の体調は完全に回復していた。

また、テグレンも、たまっていた旅疲れを、二日間の宿生活で癒すことができていた。


イサが先頭、エーテルが最後尾、その間にマイとテグレンを挟む形で、先へ進む。

途中、イサが昨日の出来事を話すと、エーテルは柔和(にゅうわ)な瞳でそれを聞いた。

マイが魔法の特訓をすることを知ると、エーテルも嬉しそうな声色で、

「私にも協力させて?

魔法学にはずっと昔から興味があって、知識だけはあるから。

マイなら、できるわ」

と、マイの背中を優しく押した。

イサとエーテル、二人の優しさに、マイは胸をほころばせる。

テグレンはそんな3人の姿を見て、

「魔法使いといっても、マイは魔法薬専属って感じだったから、戦闘経験は無いに等しいねえ。

でも、イサとエーテルがついててくれれば安心だよ。

私も見てるだけじゃ何だし、何か、魔法に関する本でも読んでみるかねぇ」

と、笑顔で言った。


さっそく、本日の昼ご飯休憩の後から、マイの魔法特訓が行われることになった。

初めての修業と言ってもいいだろう。

誰かから、何かを学ぶ貴重な時間。

未知の過ごし方に、マイのワクワク感は加速する。

そんなマイを見て、イサも心が穏やかになった。

“マイには、やっぱり笑っててほしい。

悲しい顔より、元気な顔の方が、合ってる。

俺でできることがあるなら、何でもするからな”

護衛という名の任務のためだけではない。

ひとりの女の子として、イサはマイのことを徹底的に守りたいと思った。


鋭いエーテルは、早いうちからイサの恋心に気がついていた。

というよりも、『昔から知っていた』という方が正しい。

エーテルは、幼い二人をあたたかい目で見守りながらも、切ない瞳でイサ見つめたのだった……。

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