黒水晶

今までいろいろな街で聞き込みをしたが、結局イサは、世界の異変の原因を突き止めることはできなかった。

“誰かが意図的に自然の神に干渉したんだとばかり思ってたけど、そうじゃない……?

だとしたら、世界の破滅が近いのか?”

イサの心はくもるばかりだった。


間もなくガーデット帝国に到着するという頃、イサの元に通達が届いた。

イサが、いつもの様に剣のにぎり手部分を見つめると、青光りした文字が無感情に明滅する。

通達を見て、イサは目を見開いた。

通達者はいつものヴォルグレイトではなく、どういうわけか、その相手はカーティスだったのである。

《イサ様、私です。
カーティスです。

どうか、落ち着いて聞いてください……!》

“なぜ、カーティスが!?

いつもの彼はこの時間、城の兵士達に剣術指南をしているはずなのに……”

ガーデット帝国専属の剣術師範·カーティス。

その立場を気にしつつ、イサは文を見た。

《イサ様。ガーデット帝国に……城に戻ってきてはなりません!!

ヴォルグレイト様は、イサ様の気持ちを利用しようとしています。

単なる想像や、憶測で言っているわけではございません。

私は、ヴォルグレイト様の恐ろしい計画を知っているのです……。だから……!


マイ様やエーテル様を連れて、逃げてください!


イサ様と離れても、私はあなたと過ごした14年を、ずっとずっと、忘れま…………!》

「カーティス!?」

途中で切れた文に、イサは思わず声をかけてしまう。

「イサ?」

マイはイサを気にし、テグレンやエーテルもそちらを向いた。

イサは何事もなかったかのように、

「なんでもない」

と、冷静に振る舞ったが、その心は激しく動揺していた。

カーティスからの通達。

ただならぬ状況。

今までイサの立場を悪く言ったフェルトやローアックスの存在と彼らの言葉が、イサの頭をよぎったのである。

“国王が……。父さんが、俺の気持ちを利用している?

カーティス。どういうことなんだ……”


次の瞬間、イサの動揺をかき消そうとするかのように絶妙なタイミングで、国王ヴォルグレイトからの通達が入った。

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