黒水晶

9‐3 それぞれの想い


パーティーが行われた翌日から、イサとエーテルは忙しくなった。

エーテルは、自国ルーンティア共和国とガーデット帝国を絶え間なく行き来していた。

イサはイサで、朝から晩まで休む暇のないほど働いていた。

朝は、ヴォルグレイトに付いて公務の見習い、

昼からはカーティス師範について剣術の稽古、

そして夕方から夕食の時間までは世界情勢を学ぶ時間となっていたため、執務室や書庫に入り浸りだった。



マイとテグレンは、隣同士の客室に案内されていた。

二人は、朝食を終えてから互いの部屋を行き来し、それに飽きたら城の中を歩いたりして時間をつぶし、毎日を過ごしていた。


テグレンは、ここのところ寂しそうな表情をしているマイのことが気になっていた。

マイがイサやエーテルと顔を合わせられるのは朝食と昼食の時間だけなのだが、その時間ですら、彼らはまともに話などしていない。

イサとエーテルは、旅をしていた頃のようにマイと気さくな会話をしようとせず、黙々と食事をとっていた。

執事達が見ている中、シーンとした食卓の中で、食器とフォークの触れ合う音が響くだけ。

普段はめったに食べられないであろう豪華な食事を目の前に、マイとテグレンは最初こそワクワクしていたが、会話のない食事ほど寂しいものはないと思い、おいしいはずの料理の味も味気ないと感じていた。

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