黒水晶
10 天刑

10‐1 血塗られた歴史



国王専用執務室。

茜色の空が、まぶしい。

ヴォルグレイトは窓の外を眺め、計画がスムーズに進まないことに苦悶(くもん)していた。

「我が城に、ルミフォンドを連れてきた。

なのに、なぜ現れぬ!!

黒水晶よ………。

お前は、魔法使いの元に存在するのだろう……?」


ヴォルグレイトの野望を叶えるために必要なもの。

それは《黒水晶》と呼ばれる、この世にたった一つしかないと言われている秘宝のことだった。


ヴォルグレイトが黒水晶のことを知ったのは、11年前……。

禁断剣術を使ってレイナスを危めた時だった。


レイナスの部屋。

隠し扉のさらに奥。

複数の鍵をつけた宝物庫があった。

広い宝物庫の中には、たった一冊の魔法書が置いてあった。

人目につかないよう隠されていた魔法書には、黒水晶のことが書いてある。

当時、ヴォルグレイトは夢中でそれを読んだ。


“まさか……。

レイナスよ。

お前は、黒水晶共々、朽(く)ちたのではあるまい?

頭の回るお前のことだ。

なんらかの形で、黒水晶を包蔵(ほうぞう)しているのだろう?”


復讐心にまみれて決行した、アスタリウス王国襲撃。

その際、偶然、黒水晶のことを知り、ヴォルグレイトは諦め切れぬ願望を抱いた。

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