黒水晶

“フェルトさん……。

あなたは私達の味方なのだと思って、いいんですよね?”

エーテルはフェルトのいた空間を見つめ、心の中でつぶやいた。

今まで、イサにすら話せなかった自分の心の内をフェルトに見透かされたのには驚いたが、同時に、抱えていたものを他者に知ってもらうことでホッとした。


イサのことを信用していないわけではない。

ただ、頼り過ぎて彼に負担をかけたくないという気持ちから、エーテルは自分自身の悩みをイサには話さなかった。

それだけに、エーテルにとってフェルトの登場は、大きな影響を与えた。


エーテルは今まで、誰にも言えないことを抱えて生きてきた。

しかし、フェルトはそれ以上の大きな闇を抱えて生きている。

彼のフランクな口調もあいまって、傍目(はため)からはそう見えないだろうが、エーテルには分かる。

フェルトがエーテルのオーラから彼女の心の錘(おもり)を感じたように、エーテルもまた、フェルトのオーラから彼の心に沈む暗いものを感じ取っていた。


フェルトが抱えているものを詳しく知ることは出来ないが、同じようなものを抱えた人間との接触は、エーテルに安堵(あんど)感を覚えさせるのに十分だった。

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