彼女は予想の斜め上を行く
「ゲッ」と思わず小さく声を漏らしたのは、それなりの理由があるわけで……。

彩さんは、金本さんに対する俺の気持ちを知っているらしい。

大方、俺が惚れた女と密室で悶々としているところでも見物に来たのだろ。

本当に《イイ趣味》をしていらっしゃる。

「差し入れ持ってきてやったのに、もう終わっちゃったわけ?」

彼女は怪訝そうな顔をしながら、白々しく口実を述べた。

「残念ながら、終わっちゃいましたよ。何もかも」

言ってから思った。

あっ、やっちまったな。俺。

あれほど、口は災いの元だと思ったのに…。

それも今さっき。

そう思い、先程追い出されたばかりの二階にある金本さんの部屋を見上げる。

「なに?今の言い草~」

気づいた時には、時遅し。

俺の言葉と金本さんの部屋を見上げる視線に、《イイ性格》をしていらっしゃる彩さんは何かを察知したらしい。

もう堪えきれませんとばかりにニヤニヤしながら。

「さては葵となにかあったわね~?」



「ちょっと話そうか?ちょうの~」

――――有無を言わさぬ黒い黒い笑顔により、俺はファミレスに連行されたのであった……。
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