彼女は予想の斜め上を行く

「あの時、勇人の顔真っ赤だったよねぇ~」

「あれは夕日のせいだっつーの……」

「あの時も同じこと言ってたぁ~」



「ねぇ勇人?」

「ん~?」


イマイチ覇気のない声を上げて莉緒を見ると。

俺をからかって笑ってた莉緒の表情が、どこか寂しげで真面目な顔つきにふいに変化した。


「あの頃には、戻れないのかなぁ…」

「……え?」

「勇人ともう一度…一緒にいたいよぉ…」


ヘタレでビビりな俺には、やはり断るスキルと気力がなかったからなのか。

緊張と恥ずかしさで顔を真っ赤にして、莉緒と手を繋いだ高3の俺に戻った気がしたからなのか。

―――それとも……。

涙目で俺を見上げる莉緒が、昨夜の俺と重なったからなのか。


< 204 / 251 >

この作品をシェア

pagetop