彼女は予想の斜め上を行く


しばしの沈黙のあと。

「俺は感動しましたよ?俺、こういう作品のことよくわからないド素人だけど…。不器用でも一生懸命作ったのがわかる金本さんの作品は、それだけで充分すごいと思いますよ」

ポツリポツリと話す俺の言葉に、彼女は驚いたように目を見開いたあと穏やかに微笑んだ。

「ありがとう。そう言ってもらえると、すごく嬉しい」

彼女が心の底から笑ってくれている気がして、思わずにやけそうになる。

そんな情けない自分を隠す為、話をすり替える。

「金本さん、まだやって来ますか?」

「今日は、もう終わりにしようと思って……」

だろうな。

もう作業台の上にあるのは、何本かの百合だけ。

流しにも、ほとんど洗い物らしき物もない。

「あっ、じゃあ俺。家まで送ります」

「え?」

「金本さん、ここ最近歩いて通勤してるんですよね?」

「どうして…それを?」

「中島先輩から聞きました」
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