彼女は予想の斜め上を行く

葵の多分名言を引き合いに出して、俺は挑発的な笑みを浮かべ言った。


「《野球はツーアウトから》だろ?」


自身の多分名言を聞いた彼女は、唐突にスッと立ち上がり。

金本葵本来の強気な瞳で言い放った。

「全力投球とフルスイング。してやろうじゃないの」

「あたしなりのやり方でね」と不敵な笑みを浮かべて、つけ足した。



「葵」

帰宅しようとドアノブに手を掛けるすっかり完全復活を遂げた女の名前を呼ぶと、「ん?」とこちらを振り向く。

「もし全力投球してもフルスイングしても駄目だったら、俺のとこ戻って来いよ」

「え?」

「俺ったら、超優良物件だぞ?」といたずらっぽく小さく笑った。



半分冗談で半分本気の言葉を口にしながら、俺はただひたすら想うんだ。

――願わくは、君が幸せになりますように……。
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