彼女は予想の斜め上を行く
「これ、乗車券」

俺の手に渡されたのは、新幹線自由席の乗車券。

行き先は………。

「東京?」

「うん。さっ、行こ?」

彼女は、俺の手を掴みズンズン歩き出す。

この手を掴み歩くのは、急いでいる彼女特有の癖なのだろうか?

こうして手を掴まれて歩くのも三回目になると、冷静に色々と考えられるものらしい。

改札口をくぐり抜け新幹線のホームまでもう少しというところで、歩く速度が緩んだのを確認して聞いてみた。

「癖ですか?」

「なにが?」

「これ」

足を止めると俺の視線を追って、金本さんの視線が掴まれた俺の手に移る。

「あっ、ごめん」

大して恥ずかしがることもなく、彼女は俺の手をパッと離す。

「いえ。でも、どうせなら……」

そう言って彼女の手を掴むのではなく握り、指と指を絡ませた。

「こうしませんか?」
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