抹茶な風に誘われて。~番外編集~
「えっ、してないよ。やだなあ、雅浩ってば……」

「いや、してた」

 そんなやり取りを何度か交わした後、すっとメガネをずらして、真剣な瞳を向ける雅浩。

「言っとくけど俺――咲が思ってるよりずっと、独占欲強いから」

「え?」

 聞き返した時にはもう何でもない顔をして、それでも雅浩は握った手の力を強くして。

 瞬きするだけの間に、そっと唇に感じた体温。ガラス越しに通りを歩く人々も見える窓際の席で、意外にも大胆不敵に奪われたキス。

 頬を染めるあたしに微笑んで、メニューを持ち上げた雅浩。

 その影に隠れてもう一度交わした口付けはきっと、テーブルの上のチョコよりももっと甘い――世界で一番の贈り物。

 幸せな恋人たちにも、もっと幸せを――そんなとっておきの一日、それが聖バレンタインデー、なのかもしれない。



 Fin.


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