ハレゾラ

何? 私のことなんて話してるんだ。それも自分の彼女に。
それに、何かを軽く口止めしちゃってるし。
そんなことを話してる間も、彼女は彼の腕を触ったり顔を嬉しそうに覗き込んだ
りしている。
こんな場面を見せられてまでここにいる私って……。バカみたいだ。
今度こそここから立ち去ろうと、一気に走りだした。


「……!? 咲さんっ!!」


慌てて追いかけようとする彼の手を彼女が捉え、それに従うように彼の足は止ま
った。

どこをどうやって帰ってきたのだろう。
まったく分からないが、なんとか無事に家にたどり着いた。
部屋の鍵を開け靴を脱ぐと、ふらふらとしながら部屋の奥まで歩いていく。 

(なんだか心と身体が疲れた……)

ベットの上にドサッと倒れ込む。
その途端、我慢していた涙がワーっと溢れ出し、制御できなくなってしまった。
次から次へと溢れ続ける涙で、布団はグショグショだ。

(もうどうだっていい……。)

この後、泣き疲れて寝てしまうまで、何時間も泣き続けた。
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