ハレゾラ
消えそうな恋の炎

『帰ればいいんでしょ、帰れば』

とは言ったものの、やっぱり家には帰れない……。
今頃になって、あんなこと言わなければよかったと反省する。
でも今更戻れないし、一度どこかでゆっくり気持ちを落ち着けたほうがよさそう
だ。どこか時間を気にせず入ることができる店はないかと、キョロキョロとあた
りを見渡すと、少し離れたところに、よく見るファミリーレストランが見えた。


「あそこなら長居できるか……」


うんと一人で頷くと、小走りに店へと向かった。

店につくと、まだ朝の9時前だというのに、日曜日ということもあってか思った
以上に混雑していた。それでも私は一人だったため、すぐに席へと案内される。
コートを脱ぎ腰を落ち着けると、店員が注文を聞きに来た。


「このパンケーキセット一つ。飲み物はミルクティーで」


まだ食べるの? さっき食べたばかりじゃないっ! 自分で自分にそう問いかけ
て、思わず噴きだしてしまう。
ほらっ。デザートは別腹って言うでしょ!!
そんな、くだらないことを考えているときはよかった。
しかし意識的に考えないようにしていることを、一度でも思い出してしまうと
胸が苦しくなってしまう。

(現実逃避だよなぁ……)

なるべく何も考えないようにしようとしている自分。ちゃんと向き合って話さな
きゃいけないことなのに、大の大人が何やってるんだろう。
自分のしていることが、あまりにも幼稚に感じて情けなかった。
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