Black Coffee.
「 ・・・顔、真っ赤ですよ? 」
ハッと我に返って、至近距離で
やっぱり少し心配そうに顔を
覗き込まれて何歩か退くと
ははっ、と彼の笑い声が響いた。
「 菜緒さん、帰りましょう? 」
「 あ、はいっ 」
遠くで見ているだけだった彼が
たった一日でこんなに近い人に
なるとは思ってなくて、
本当に、一生分の運をたった
一日で使い果たしたんじゃないか、
なんて思いながら前を歩く
彼を追いかけていた。