雫-シズク-
やっとだまった僕を見て、葵さんが口を開く。


「いいか、お前は今日熱が出て学校を休むんだ。俺が話してきてやるからそのまま寝とけ。どうせ俺も学校なんか行かないから、またなにか話したくなったら俺に話せ」


それだけ言ってずっとにぎってくれていた手をそっとはなすと、葵さんは部屋を出て行った。


僕は一人になってもまだあたたかいその手を胸に抱いて、そのままうとうと眠り始める。


少しずつ夢も見ないくらいの深さにしずんでいく体を心地よく感じながら。




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