雫-シズク-
相変わらずの細い肩をゆったりと俺に預けて思い出したように葵さんが言った。


「お前ここに来て何年だっけ?」


揉む手を休めずに頭だけ傾げて答える。


「えーと?四年、かな」


「そっか、もう四年の付き合いか。イッ、イテテテッ、もっと優しく揉め!」


「葵さんが凝り過ぎなの!猫背治した方がいいよ」


うるせーよと言ってまた葵さんが笑う。




……そう、俺がこの学園に来てもう四年が経つ。


今年中一になった俺がこうして笑い合えるのはずっと葵さんただ一人。


そして中学に上がってから小遣い欲しさに新聞配達のバイトも始めた。


わずかな収入だけどその中からしっかり学園費が引かれているから、手元に残るのは本当に少ない。


< 129 / 347 >

この作品をシェア

pagetop