雫-シズク-
刻印。
葵さんが勝手にこの世を去ってから一ヶ月が経った。


今まで二人で狭いくらいだった部屋を広く感じながら、俺は一人で淡々と生活を送っている。


桜井さんの話では、葵さんの葬儀は家族だけの酷く淋しいものだったらしい。


そんな隠されるような最後を迎えた葵さんを想像すると、どうしても自分の親のあの重苦しかった葬式を思い出して気持ちが沈み込んでしまう。


まだなにもわからなかった子供の頃は泣き叫ぶこともできたけど、全てを知って少しずつ大人に近付いている今の俺は……。


「葵さん、あと一月もしないうちに卒業するはずだった季節が来るよ……」


暗闇の中、下には誰も眠っていない二段ベットで仰向けに寝ながらぽつりと呟いた。


葵さんがいなくなったからって、自分の使っているベットや机やたんすの位置が変わることはない。


だから俺は一人なのに、毎日いちいちくたびれたはしごを上って眠りについていた。


< 240 / 347 >

この作品をシェア

pagetop