約束の恋



「慧君が嫌ならこの勝負引き受けなくてもいいよ。ただ、引き受けなかった場合、慧君が負けた――逃げたことになるよね……」

ぴしっ

世界が凍った。


癒亜らしくない厭な言い方で、

俺が勝負に負けるだと?

逃げるだと? しかも、癒亜なんかに……。


俺に負ける、逃げるなどという言葉がプライドを刺激した。


「分かった、勝負しよう!」

癒亜は俺の答えがすでにこうなると分かっていたかのように頷き、優しく微笑んだ。


癒亜の長い髪が風に靡く。

横髪を右手で押さえる癒亜は夕日を背にして、一枚の風景画みたいに綺麗で、今までで一番儚く美しいと感じた。


それと同時に、一瞬だったが、癒亜が悲しいような寂しそうな顔をした。



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