私の片想い事情 【完】

「もっとヤキモチ妬いて欲しかった?」


じっと隼人の後ろ姿を見ていた私に、不届き者はまたムカつくことをいう。


「何のことを言っているのかわかりません!」

「西崎さん、かなりイラついてたよね?やっぱりヤキモチ妬かせちゃったかな?」


私の反応をうかがうように瀧川君は続ける。


「男って、恋愛感情とは別に変な所有欲があるんですよ?」


と男の心情のイロハなど分かる由もない私に訳の分からないことを投げかけてくる。


ただ、「恋愛感情とは別に」と言われたことが心に引っ掛かり、その先を聞くことはやめた。


ときめきとはまた違う、ドキドキする胸の鼓動が心の中の不安な部分を加速させる。


「からかわないで」


私にはそう一言零すだけで精いっぱい。


「からかってなんかいません。大真面目ですよ」


瀧川君は元の笑顔に戻り、行きましょう、と隼人とは逆方向に歩みをすすめた。


「何か瀧川君ってわかんない」

「そお?みなみさんが気に入っただけなんだけどなぁ」

「ますますわかんないっ!」

「今にわかりますって~」


そんな会話を繰り返しながら、プールへの従業員専用のドアを開けた。



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