理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~

静けさ







「俺を捨てて、芸能人の彼氏とは、良い御身分だな!」

洋介の怒鳴り声が響き、鋭い視線が突き刺さる。


「洋介が、なんでココに…?」

驚きと恐怖で固まる私に、

「ウチが呼んであげたんよ。
一般人のアンタさんには、一般人の恋人がお似合いやわ?

逸晴は、返して貰うわ。

どうせ、アンタさんとは、住む世界も違うさかい、ただの暇潰しやったんやしな」

「…優香さん」

言い返す言葉も見つからないまま、イッセイを探すけれど…

周りは何も見えない暗闇で…

「イッセイ!!!」

大声で叫ぶと…



「…ヤ。…アヤ…起きて」

名前を呼ばれた方へと、目を開けると…
暗闇だった世界に、オレンジがかった間接照明の、明かりが差し込む。


「…イッセイ?」

さっきまで、見つからなかった姿を確認する。


「大丈夫か?
かなり魘されとったけど、悪い夢でも見たんか?」

顔を覗き込みながら、よく冷えたミネラルウォーターを差し出し…
涙と額の汗を拭ってくれる。


ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲み、夢から覚めたコトを認識する。


夢?

なんで急に、こんな夢なんか…

「あはは。
怖い夢で泣いちゃうなんて、子供っぽくて恥ずかしい」

笑って誤魔化す私を、イッセイはぎゅっと抱きしめ…

「怖い時に俺の名前を呼んでくれて、ありがとう。
アヤのコトは絶対、どんなコトからでも俺が護るから」

そう言い聞かせながら、何度も何度も私の頭を撫でた。


「ほな手始めに、もう怖い夢なんか見ぃひんように…」

そう言ってイッセイは…
腕枕と言うよりも、抱き枕と言わんばかりに、私に抱きつくようにして眠りにつき…

私もイッセイの体温を感じながら眠ることが出来て安心したのか、ぐっすりと眠ることが出来た。
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