理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~

新しい朝

重い瞼を持ち上げ、目を開けると…

薄暗い明かりの中、見慣れない真っ白の壁が目に入る。


うつ伏せの躰のまま、首だけを持ち上げて反対を向いてみるも…

そこにまた広がっていたのは、真っ白の壁だけだった。


そう、目に入るのは真っ白の壁と、私以外に誰もいないベッド。


耳を澄ませても、シャワーの水音さえ聞こえない。


現実から目を背けたくて、枕に顔を埋める。



…きっとイッセイは、帰ってしまったんだ。


意識を失うなんて、遊び慣れていない、面倒な女だと呆れたに違いない。


あの優しい言葉も…

私を抱いた熱い躰も…

真っ直ぐに私を射抜く、あの理想の瞳も…

全てが、一夜の夢だったんだ。



…それでも良いと望んだのは、私。


一夜の夢を見ただけ。



あのメモは、この旅の思い出にしよう。


決して、かかってくることも、かけることもないであろう、イッセイの電話番号が載った、あのメモ。


もっとキスしておけば良かった…

もっと抱きしめて欲しかった…

もっと、抱いて欲しかった…

もっと、もっと、もっと…


たった一夜で私の心を捕らえた、イッセイのコトを想うだけで、涙が溢れ出す。


ふがいない自分への後悔と…

女としての悦びを教えてくれたコトへの感謝が、ごちゃ混ぜになった涙。


「ひぃぃっく、ひぃぃっく、うぇぇぇーん」


誰に遠慮することも、隠すコトもなく…

一人ぼっちの部屋で、子供のように声をあげて泣きじゃくった。
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