-Vermillion-

 私達の写真を収めたアルバムは、両親が海外に行く前にしまった筈だ。
 両親が使っていた部屋と言えば、寝室か、その隣の父の書斎の二つだ。
 真朱は少し考えてから、まず二階の両親の部屋に行った。
 
 二人が海外に出てから寝具は全て片づけられて、
 今は埃避けの布か掛けられている。
 一通りタンスを探しても見つからなかったのか、
 今度は書斎に向かった様だ。

 父の書斎は埃っぽい臭いがするものの、中は綺麗に整頓されている。
 真朱は本棚に昔のアルバムを見つけて、少し微笑むと何冊か取った。

 ふと並べられた本の上に置いてある、クリアファイルが目に入った。
 数枚の資料は入っている様だ。
 特に深く考えずに、ただ何となく手に取って開いてみる。
 その中身に、真朱は目を見開いた――

 「真朱…?」
 私が声を掛けた瞬間、真朱はぎょっとした様に振り向いた。
 
 まるで悪戯をした子供が、母親に名前を呼ばれた時の様に……
 
「朱乃……」
「どうかしたの…?」
「何でここに?」
「真朱が…なかなか、戻らないから…」
「ゲームはどうした。」
「爽と代わった…アルバムあった…?」
「アルバム?あぁ、あったよ。戻ろう。」

 少しおぼつかない足取りで階段を下る真朱に、
 後ろからそっと抱きついた。

「どうかしたの…?」
「何が?」
「真朱、動揺してる…」
「大丈夫。」

 真朱は首に回った私の腕にそっと触れると、静かに言った。

「大丈夫だよ……」
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